今回はミツバチの結婚、つまり交尾について解説していきます。
詳しく解明されていないことも多い、神秘的なミツバチの交尾についてぜひご覧ください。
セイヨウミツバチとトウヨウミツバチ(ニホンミツバチ)
日本の養蜂は主にセイヨウミツバチとトウヨウミツバチ(ニホンミツバチ)の2種類のハチを利用して行われています。
ニホンミツバチはトウヨウミツバチの一種ですが、本記事ではトウヨウミツバチとニホンミツバチは同義のものとして扱います。
セイヨウミツバチ
セイヨウミツバチは、ヨーロッパ、アフリカや中東に起源をもっています。ヨーロッパ原生のセイヨウミツバチは世界中に持ち込まれ、広く分布しています。
近代的な養蜂に主に用いられている種で、現在は世界中で飼育されています。
トウヨウミツバチ(ニホンミツバチ)
トウヨウミツバチとは中央アジアから東アジア、東南アジアにも起源をもつミツバチです。
ニホンミツバチはトウヨウミツバチの中でも長い間日本に生息し、進化を遂げてきた在来種のことです。
種としては韓国に生息するトウヨウミツバチと非常に近いようです。
ニホンミツバチとセイヨウミツバチの違いはこちらの記事で詳しく解説しています。
ミツバチの交尾行動ってどんなもの?
交尾を行うのは女王バチと雄バチのみ
女王バチ
女王バチは同じコロニーに1匹のみ存在し、唯一産卵能力を持っています。女王バチと働きバチは同じ受精卵から生まれるとされ、両者の差を分けるのは幼虫期に与えられる餌の違いと量であると考えられています。
女王バチは幼虫のころからローヤルゼリーを餌として与えられています。このローヤルゼリーに含まれるロイヤラクチンという物質が、女王バチへの分化の因子になっていると論文で報告されています。
雄バチ
働きバチでも女王バチでもない、生殖を唯一の役割を目的とした雄のミツバチです。雄バチは無精卵から生まれ、産卵管もないため毒針を持っていません。
※ミツバチの毒針は産卵管が変化したものです。
働きバチ
先ほども記述した通り、働きバチは女王バチと同じ受精卵から生まれる雌のミツバチです。働きバチは餌探し、巣の警備、女王バチや幼虫の世話など、生殖以外のあらゆる仕事をこなしています。
ミツバチの交尾行動
雄バチと女王バチの誕生
春から初夏の繁殖期に、働き蜂巣房より少し大きい雄蜂巣房に女王蜂が未受精卵を産みつけ、ここから雄バチが誕生します。
その時期の前後に働きバチや雄バチの巣房とは形の異なる、新しい女王バチを育てるための王台が造られ、受精卵が産み付けられます。ここから新しい女王バチが誕生します。
誕生した女王バチは大量のローヤルゼリーを摂取し成虫まで成長していきます。このローヤルゼリーこそが女王バチと働きバチを分ける物質だといわれており、ローヤルゼリーは女王バチのみが食べることができます。
交尾飛行
羽化して一週間ほど過ぎ結婚適齢期を迎えた女王バチは体重を減らして、結婚飛行のための準備をします。4月~6月頃の晴れた日に、女王バチと雄バチは巣を出て飛び立ち空中で交尾を行います。
雄バチは午後の特定の時間帯に集中して飛行することが報告されています。雄バチは羽化後 10~16 日になると天候の悪い日を除いて、毎日同じ時刻に交尾場所へと飛び立ちます。
飛行の時刻
種類や場所により変わりますが、同じ地域で同種のミツバチの飛行の時刻は決まっており、特定の時刻にいろいろな巣から雄バチが一堂に集まってきます。
アメリカ・ルイジアナでのセイヨウミツバチの雄バチの飛行時刻は 13:56~16:26。
日本でのセイヨウミツバチの雄バチの飛行時刻は交尾最盛期の調査で 11:30~15:00、飛行のピークは13:00~13:30であるということも研究により確かめられています。
人間のように巣同士の通信手段が無いにも関わらず、同種のミツバチが同じ時刻に集まるということはとても興味深く、神秘的であるとまで感じます。
女王バチもほぼ同時刻に同じ場所で飛行し、たくさんの雄バチと交尾を行います。女王バチがたくさんの雄バチと交尾を行う理由は、巣の遺伝的多様性を確保するためだといわれています。
交尾の場所
交尾の場所もある程度特定されていて雄バチの集合場所は「Drone congregation area(DCA)」と呼ばれています。このDCAの近くに女王バチが飛来すると、多数の雄バチが彗星状になって女王バチを一斉に追いかけます。
雄バチが女王バチの飛来に気付き、追いかけるのは、女王バチの発する性フェロモンのおかげであるとされています。
交尾を行うと死んでしまう雄バチが、なぜDCAを知ることが出来るのかは、まだよく分かっていません。調査では7kmも離れた巣から飛来する雄バチもいたらしく、とても興味深いことです。
同様にどのような場所がDCAに選ばれるのかもいまだ解明されていません。しかし、オーストラリアでは少なくとも12年もの間同じ場所がDCAとなっていることが確認されています。
女王バチの交尾回数
先ほどもご紹介したとおり、女王バチはたくさんの雄バチと交尾をします。
セイヨウミツバチの女王バチの輸卵管中の精子数を調べて見ると,1回の交尾飛行で8700万の精子を受け取っていたことがそうです。雄バチ1匹の精子数は約1100万であるため、8匹の雄バチと交尾したことが観察されました。
交尾回数については,解析が進むほど幅があるが,セイヨウミツバチでは12匹,トウヨウミツバチでは18匹程度と考えられている.さらに1回の交尾飛行で精子量が十分確保できない場合には,その日の内か,または12日以内に2回目,3回目の飛行を行うことも認められた.
ミツバチの配偶行動,吉田 忠晴(2011),玉川大学学術研究所ミツバチ科学研究センター,日本農薬学会誌 36(4),501頁
このように女王バチは10回以上もの交尾を行い、充分に雄バチの精子を蓄えた後巣に戻り、その後は産卵を一生続けることになります。
越冬の時期など産卵を行わない時期もありますが、寿命を迎えるまでの3~8年間、最盛期には1日1000個以上の卵を産みつけます。
交尾標識
交尾を成功させて帰ってきた女王バチのお尻には白い小さな塊のようなものが付いており、これは「交尾標識」といわれています。
交尾標識は、雄バチが交尾を終えた際に女王バチの交尾器に残すものです。雄バチは女王バチと交尾を行う際、前の雄バチが付けた交尾標識を取り外し、自分の交尾標識を付けます。
そのため、女王バチが交尾を終えて巣に帰るときに付いている交尾標識は最後の雄バチが残したものです。
交尾標識は、他の雄バチとの交尾を防ぐ栓と考えられていましたが、その説は否定されています。
このことから,雄蜂の交尾器を傷つけないような機能を果たしているのではないかと考えられている.さらに交尾標識は次に交尾をする雄蜂を助ける視覚的な目標となり,続く交尾を容易にしている.交尾標識の存在は,女王蜂と雄蜂の交尾を早め,女王蜂の飛行時間を短縮することができる.
ミツバチの配偶行動,吉田 忠晴(2011),玉川大学学術研究所ミツバチ科学研究センター,日本農薬学会誌 36(4),501頁
現在の説では、むしろ交尾標識によって、交尾可能な女王バチをは他の雄バチに見つかりやすくなり、交尾飛行は短縮されます。交尾を終えると死んでしまう雄バチですが、他の雄バチを助けるための最期の協力であるとされています。
セイヨウミツバチとニホンミツバチの異種間の交尾
セイヨウミツバチとニホンミツバチは交尾飛行の時刻、交尾場所(DCA)が異なることが分かっていますが、この差は完全なものではなく、DCAに異種のミツバチが紛れ込むことが分かっています。
そのため高い確率で異種交尾が起こっていますが、異種交尾で受精した受精卵は孵化することはないため雑種が生まれることはないそうです。
参考:ミツバチの配偶行動,吉田 忠晴(2011),玉川大学学術研究所ミツバチ科学研究センター,日本農薬学会誌 36(4),497–502頁
おわりに
ここまで、ミツバチの結婚についてご紹介しました。
ミツバチの交尾行動にはまだ解明の進んでいない神秘的な部分が多くあります。またミツバチはとても社会性の高い生物でもあり、ミツバチについては現在でも研究が行われています。本メディアによって、不思議で神秘的なミツバチを好きになってくれた方が増えれば幸いです。
ミツバチのことをもっと知りたい方はこちらの記事もおすすめです。
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